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オムニチャネル - 最新の成功事例 「勝てるシステム」とは?

オムニチャネルについて

オムニチャネルとは、販売チャネルを統合し、顧客が実店舗やe コマース サイト、カタログなどを利用してシームレスに商品を購入できるようにすることで、現実の世界とデジタルの世界の境界線をつなぐツールです。

名前の由来は、「すべて」を意味する「オムニ」と、商品やサービスの流通する「経路」に由来する「チャネル」を組み合わせたものです。

近年、オムニチャネルは小売業界に不可欠な要素となり、買い手と売り手をさらに結びつけることで買い手の顧客経験を向上させる大きな要素となっています。

この慣行は 2011 年に米国で生まれました。その年次報告書で、老舗百貨店のメイシーズは、新しい購買方法である「オムニチャネル」を導入すると発表しました。

90 年代後半からオンライン ショッピングが普及するにつれて、メイシーズは売り上げを維持するのに苦労し、業績不振に悩まされていました。店舗は、消費者がオンラインで購入する前に製品を確認できるショールームのように利用されていました。

解決策として、メイシーズは店舗と在庫を統合する動きに出ました。各店舗の在庫状況を表示し、購入した商品を引き取るオプションとして実店舗を追加したほか、オンラインで購入した商品を実店舗に直接返品することもできました。

同社はまた、顧客が店舗にチェックインし、さまざまなクーポンを受け取ることができる Macy's アプリを作りました。さらに、ネット予約でプロのスタイリストからアドバイスが受けられる「マイスタイリスト」なども続けてリリースしました。

オンラインとオフラインのサービスを接続して統合することで、同社の売上は翌年に 40% も増加することに成功しました。

オムニチャネル導入の発表から 10 年、メイシーズはこの分野で素晴らしい成功例となり、顧客の購買習慣の変化に対応するために長年に渡り絶え間なく革新的な手段を実行しています。

オムニチャネルの成功事例

ウォルマート
米国アーカンソー州に本社を置く世界最大の小売業者であるウォルマートは、オンラインと物理的な世界を融合させることで、大きな進歩を遂げており、今日も成長し続けています。

1969 年の創業以来、同社は郊外に大型店を出店し、サプライ チェーンを合理化し、低利益で高売上を実現するという戦略によって大きく成長してきました。しかし、Amazon などの大手 EC 企業の台頭に伴い、多くの顧客がオンラインプラットフォームに移行する動きを見せていました。

危機を察知したウォルマートは、2010 年代初頭にオムニチャネルの導入を開始し、その後も推進しました。大規模なネットワークを利用して、同社は顧客満足度の向上と既存店舗での売り上げの増加に注力する戦略で顧客を呼び戻すための取り組みを試みました。

特に成功したのは、オンラインで注文した食品を店舗から直接顧客の家に届ける「オンライン食料品配達」システムでした。もう 1 つの取り組みは、オンラインで購入した商品を店舗の駐車場で受け取ることができる「オンライン食料品ピックアップ」です。これらのイニシアチブにより、会社の業績が復活しただけでなく、オンライン販売も Amazon との販売ギャップを埋める兆しを見せました。

近年はウォルマートも人工知能に注目しており、ECプラットフォームでのおすすめ機能を強化したスタートアップを積極的に買収しています。

セブン&アイ・ホールディングス

「オムニセブン」は、セブン&アイ・ホールディングスが実施する国内最大級の取り組みです。

独自の EC サイト オムニセブン に加えて、セブンネットショッピング、西武そごうe.デパート、イトーヨーカドーネット通販、アカチャンホンポネット通販、ロフトネットストアは、ひとつのECサイトとして機能するオムニセブンに加盟しています。ご購入いただいた商品は、セブンイレブン各店舗でお受け取りが可能です。

また、実店舗での顧客維持を図るため、さまざまな店舗で買い物をすると共通のポイントやマイルが貯まる「セブンマイルプログラム」を導入しました。

無印良品

良品計画が開発したアプリ「MUJI Passport」は、ECと実店舗の両方で顧客満足度向上を目指して開発されました。

実店舗でのチェックイン (GPS トラッキング経由) により、顧客はオンラインで使用できるマイルを獲得できます。これにより、顧客が実際の店舗に足を運ぶきっかけが生まれます。

また、店舗近隣の顧客に日替わり弁当や野菜をお届けする「無印良品デリバリー」や、顧客との接点を最大化する「無印良品パスポート」を展開しています。

ニトリ

近年、日本のインテリア小売大手であるニトリは、都市型店舗の出店に力を入れており、ショールームにも力を入れています。

「手ぶらショッピング」と題して、店内の商品に貼られたバーコードをニトリアプリでスキャンすることで買い物リストを作成することができます。顧客の利便性向上に加え、都市部店舗の店頭在庫不足を補う目的のために実施しました。

TSUTAYA

ツタヤアプリは、カルチャーコンビニエンスクラブが開発したツタヤのオムニチャネル イニシアチブの大きな柱です。

2020年11月より、近隣店舗の在庫情報を確認できるほか、アプリでの決済が可能になりました。動画や書籍のおすすめ機能や、過去の購入履歴、レンタル履歴データからのおすすめ機能も利用できるようになりました。

丸善ジュンク堂書店

丸善ジュンク堂書店は、オムニチャネルを活用して実店舗を強化した事例です。

池袋にあるジュンク堂書店の旗艦店は、日本で最も優れた蔵書を持つ書店として知られています。 200 万冊以上の蔵書を誇るジュンク堂は、オンライン利用の顧客の膨大なニーズに合わせて、限定版の本や出版社に在庫のない本を提供することができます。 「店舗受け取りサービス」のニーズもまだまだあり、これらのサービスを提供することでAmazonとの差別化に成功しています。

ユニークな取り組み

オムニチャネルの普及に伴い、さまざまなユニークな取り組みも生まれています。日本で展開するグローバルファッションブランドは、顧客が色やパターン、デザインを選択してオリジナルのポロシャツをデザインし、購入することで、これまでにない新しいショッピング体験を提供しています。

オムニチャネルの取り組みが失敗する理由

企業がオムニチャネルを推進するにつれて、失敗につながる要因とパターンがより明らかになりました。

オムニチャネルが失敗する最も一般的な理由は、消費者視点の欠如です。メイシーズはオムニチャネル戦略により2011年に売上を大きく回復し、EC事業は成長を続けたものの、店舗売上高は徐々に減少。顧客の EC 指向が強まるにつれ、メイシーズは 2016 年にいくつかの店舗を閉鎖せざるを得なくなりました。さらに、内部の機能横断的な統合の欠如も失敗の要因として挙げられています。小売店の担当者によると、オムニチャネル化のプロセスにより、実店舗チームと EC チームの間でパフォーマンスに関する摩擦が生じることも一因となっています。これは、企業の評価システムの見直し及び最適化が必須になったことを示唆しています。

10 年前にオムニチャネルが誕生して以来、試行錯誤、成功と失敗がオムニチャネルを形成し、より強力で適応性の高いアプローチへと進化させてきました。成功と失敗、そしてさまざまな試行錯誤を経てオムニチャネルがビジネスに与える影響がこれまで以上に明確になってきました。